曲目・歌詞解説

松竹梅|歌詞の意味・三ツ橋勾当・梅と松と竹を解説

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「松竹梅」は、梅・松・竹という三つの吉祥の景物を、春から秋への移ろいとともに歌い上げた地歌箏曲です。

曲名は「しょうちくばい」と読みます。三絃作曲は三ツ橋勾当(三橋勾当)で、大坂で作られた祝儀曲・手事物です。享和(1801~1804年)以前、あるいはそれ以前の天明期ごろに成立したと考えられており、箏の手は流派によって異なるとされています。歌詞は、前歌で梅(浪花の春)、中歌で松(君が代の栄え)、後歌で竹(江戸の秋)を歌う構成になっています。

「松竹梅」は古くから慶事の象徴とされる三つの植物を、それぞれ異なる季節・土地の情景に配して描いた、格式のある祝儀曲です。曲中にはにぎやかな手事(間奏)が置かれ、巣籠地(すごもりじ、鶴の巣籠りを描写する旋律)が合わされる点も特徴です。

「松竹梅」の基本情報

項目内容
曲名松竹梅
読みしょうちくばい
分類地歌・箏曲、手事物、祝儀曲
作詞不詳
三絃作曲三ツ橋勾当(三橋勾当、大坂)
箏手付流派により異なる
主な編成歌・三絃、箏(篠笛または尺八を加えた三曲合奏で演奏されることもある)
三絃調弦二上り-一下り(三上り)-本調子-高二上り
構成前歌(梅)-中歌(松)-後歌(竹)-手事(マクラと手事三段)
成立享和(1801~1804年)以前、または天明期ごろ
主題梅・松・竹という三つの吉祥の景物を、春から秋への移ろいとともに歌う祝儀曲

複数の解説サイトによれば、「松竹梅」は三ツ橋勾当(三橋勾当)作曲の地歌手事物で、前歌に春の浪花(大坂)の梅と鶯、中歌に松と鶴を配した新年・君が代の栄え、後歌に秋の虫の音と竹を歌う構成とされています。曲の終盤にはマクラと手事三段からなる大きな器楽部分が置かれています。なお本曲を原型として、菊沢検校が箏に菊塚与一の手付を得た《新松竹梅》を、また菊塚与一自身が箏の高低合奏による《明治松竹梅》を、それぞれ後年に作曲しています。また「松竹梅」は、同じ三ツ橋勾当作曲の「根曳の松」「名所土産」とあわせて「三役物」と呼ばれる代表作三曲のひとつでもあります。

「松竹梅」とは

「松竹梅」は、古来より慶事の象徴とされてきた梅・松・竹の三つの植物を、それぞれ異なる季節と土地の情景に重ねて描いた曲です。

前歌では、春の大坂(浪花)を舞台に、鶯が来て啼く梅の名所の情景が歌われます。中歌では一転して、松と鶴に象徴される「君が代」の永続的な繁栄が歌われ、後歌では、秋の虫の音とともに風にそよぐ竹の情景が描かれます。梅(春)・松(永遠の繁栄)・竹(秋)と、季節や主題を変えながら三つの景物を描き分ける構成が、この曲の大きな特徴です。

曲の終盤には、マクラと三段からなる大きな手事が置かれ、鶴の巣籠りを描写する「巣籠地」の旋律も合わされます。にぎやかで技巧的なこの手事が、祝儀曲としての華やかさを一段と引き立てています。

古くから親しまれてきたこの曲を原型として、明治期には菊沢検校による《新松竹梅》(箏に菊塚与一の手付)や、菊塚与一自身による《明治松竹梅》(箏の高低合奏)といった、新しい時代に向けた派生曲も作られています。

松竹梅の歌詞

たちわたる霞を空のしるべにて、のどけき光新玉の春たつ今朝は、足曳きの山路を分けて、
大伴の三津に来啼く鶯の、南より笑ひ初む、かをりにひかれ声の麗らか。羽風に散るや、
花の色、春も猶し栄えある、この里の、浪花は梅の名どころ。

君が代は濁らで絶えぬ、みなかみは水澄みけらし国民も、げに豊かなる四つの海。
千歳限れる常磐木も、今世の齢に引かれては、幾世かさぬる嵐吹く音。
枝も栄ゆる若緑、生ひ立つ松に巣をくふ鶴の、久しき御代を祝ひ舞ふ。

秋はなほ月の景色も面白や、梢々に霧ぞ影の、臥しどにうつる夕まぐれ、ともに虫の声々に、
かけて幾代の秋に鳴く、音を吹き送る風につれて、そよぐは窓の群竹。

※本記事の歌詞は、ご提供いただいた尺八譜に掲載された詞章を底本としています。判読の難しい箇所は本記事冒頭の備考をご参照ください。譜本や流派によって表記が異なる場合もあります。

歌詞全体の意味

一面にたなびく霞を空のしるべとして、のどかな光がさす、新しい年の春が立つこの朝、足曳きの山路を分け入っていくと、大伴の三津(難波の港)に飛来して啼く鶯が、南の方角からほころび初めます。その香りに引かれるように、鶯の声は麗らかに響き、羽風に花びらが散っていきます。花の色も、春もなお盛んなこの里――浪花(大坂)は、梅の名所として知られています。

君が代は、水が濁ることなく絶えることのないように、永遠に栄え続けます。水源は澄みわたり、国民もまことに豊かな四つの海に恵まれています。千年を寿命とする常磐木(松)でさえ、この御代の齢にひかれて、幾世代にもわたって嵐の吹く音を聞き続けてきました。枝も栄える若々しい緑、育ちゆく松に巣をつくる鶴は、長く続くこの御代を祝って舞います。

秋になれば、月の眺めもまた趣深いものです。梢々にかかる霧の影が、臥所(寝床)に映る夕暮れどき、それとともに、虫たちが幾代にもわたって秋ごとに鳴き続けてきた声が聞こえます。その音を吹き送る風につれて、そよそよと音を立てるのは、窓辺の群竹です。

曲名「松竹梅」の意味

「松竹梅」は、寒さの中でも緑を保つ松、まっすぐに伸びる竹、寒中に花開く梅という、古くから慶事の象徴とされてきた三つの植物です。

この曲では、それぞれの植物に異なる季節と土地、そして異なる意味合いが重ねられています。

曲名には、

  • 春の浪花に咲く梅と、そこに来て啼く鶯
  • 松と鶴に託された、君が代の永遠の繁栄
  • 秋の虫の声とともにそよぐ竹の、涼やかな風情
  • 三つの吉祥の景物を通じて言祝がれる、めでたさ

といった意味が重ねられています。

「たちわたる霞を空のしるべにて大伴の三津に来啼く鶯の花の色春も猶し栄えある浪花は梅の名どころ」(前歌・梅)

前歌では、新しい年の春を迎えた浪花(大坂)の情景が歌われます。

霞がたなびく空を道しるべに、山路を分け入っていくと、大伴の三津(難波の港の古称)に鶯が飛来して啼きます。その声に誘われるように咲く梅の花は、浪花を梅の名所たらしめている、という、春らしく華やかな情景から曲は始まります。

「君が代は濁らで絶えぬ千歳限れる常磐木も枝も栄ゆる若緑生ひ立つ松に巣をくふ鶴の久しき御代を祝ひ舞ふ」(中歌・松)

中歌では一転して、松と鶴に象徴される、永遠の繁栄への寿ぎが歌われます。

「君が代は濁らで絶えぬ」は、御代の永続を水の清らかさにたとえた表現です。千年の齢を持つとされる常磐木(松)でさえ、この御代の長さにひかれるという誇張は、それだけこの御代がめでたく、長く続くことを言祝ぐものです。若々しい緑の松に鶴が巣をつくり、久しい御代を祝って舞うという情景は、松竹梅の中心に据えられた、最もめでたい部分といえます。

「秋はなほ月の景色も面白や梢々に霧ぞ影のともに虫の声々に音を吹き送る風につれてそよぐは窓の群竹」(後歌・竹)

後歌では、季節が秋に移り、竹の情景が歌われます。

梢にかかる霧、夕暮れの臥所に映る景色、幾代にもわたって鳴き続けてきた虫の声――これらの情趣豊かな秋の風物とともに、風にそよぐ窓辺の群竹が描かれます。梅の春、松の永遠性に続いて、竹には秋の涼やかな風情が重ねられ、三つの景物がそれぞれ異なる季節美を見せる構成になっています。

手事の特徴

「松竹梅」の手事は、マクラと三段からなる大きな構成で、曲の終盤ににぎやかに置かれています。

鶴の巣籠りを描写する「巣籠地」の旋律が手事に合わされており、中歌で歌われた松と鶴のイメージを、器楽的に発展させる役割も担っています。

曲の構成

「松竹梅」は、大きく次のように捉えると分かりやすい曲です。

  1. 前歌(梅)
  2. 中歌(松)
  3. 後歌(竹)
  4. 手事(マクラ・手事三段)

前歌(梅)

前歌では、春の浪花を舞台に、鶯が来て啼く梅の名所の情景が歌われます。

中歌(松)

中歌では、松と鶴に象徴される、君が代の永遠の繁栄が歌われます。三つの景物の中でも、最もめでたさが強調される部分です。

後歌(竹)

後歌では、秋の虫の音とともに、風にそよぐ竹の涼やかな情景が歌われます。

手事

手事はマクラと三段からなる大きな器楽部分で、巣籠地の旋律が合わされる、にぎやかな聴かせどころです。

三絃の役割

三絃は、二上りから一下り(三上り)、本調子、高二上りへと調弦を変えながら、梅・松・竹それぞれの情景を描き分けます。

終盤の手事では、巣籠地の旋律を交えながら、技巧的な器楽的展開を見せます。

箏の役割

箏の手は流派によって異なり、本曲を原型とした《新松竹梅》(菊沢検校作曲、箏は菊塚与一の手付)のような派生曲も生まれています。

尺八の役割

「松竹梅」は、篠笛または尺八を加えた三曲合奏で演奏されることもあります。三絃・箏の調弦の変化に合わせて、季節ごとの情景を吹き分けることが求められます。

演奏するときのポイント

梅・松・竹、三つの景物を描き分ける

前歌の梅、中歌の松、後歌の竹は、それぞれ異なる季節と情趣を持っています。ひとつながりの曲でありながら、三つの場面転換を意識して演奏することが大切です。

中歌の寿ぎをひときわ華やかに

中歌の「君が代は濁らで絶えぬ」以下は、この曲の中でも最もめでたさが強調される部分です。祝儀曲としての格調を意識して、ひときわ華やかに演奏します。

手事の巣籠地を丁寧に

終盤の手事に合わされる巣籠地の旋律は、中歌で歌われた鶴のイメージを引き継ぐ部分です。単なる技巧としてではなく、鶴の巣籠りの情景を思い描きながら演奏すると、曲全体のまとまりが生まれます。

調弦の変化を生かした音色づくり

三絃は二上り・一下り・本調子・高二上りと、曲中で調弦が大きく変化します。それぞれの調弦が持つ音色の違いを生かし、場面転換を耳で感じさせる演奏を心がけます。

「松竹梅」の聴きどころ

  • 霞たなびく浪花の春、大伴の三津に啼く鶯と梅の名所
  • 「君が代は濁らで絶えぬ」に込められた、永遠の繁栄への寿ぎ
  • 松に巣をつくる鶴が、久しき御代を祝って舞う中歌の華やかさ
  • 秋の虫の声とともに風にそよぐ、後歌の竹の涼やかな情趣
  • マクラと三段からなる、にぎやかで大きな手事
  • 中歌の松と鶴のイメージを引き継ぐ、巣籠地の旋律
  • 二上り・一下り・本調子・高二上りと変化に富む、三絃の調弦
  • 《新松竹梅》《明治松竹梅》など、後世に生まれた派生曲との系譜

他の曲との関連

「松竹梅」は、同じ三ツ橋勾当作曲の「根曳の松」「名所土産」とあわせて「三役物」と呼ばれる、三ツ橋勾当の代表作三曲のひとつに数えられています。いずれも祝儀性の強い、格式ある手事物です。

まとめ

「松竹梅」は、三ツ橋勾当作曲による地歌・箏曲の祝儀曲・手事物です。

梅・松・竹という古来からの吉祥の景物を、前歌に春の浪花の梅、中歌に君が代の永遠の繁栄を象徴する松と鶴、後歌に秋の趣を感じさせる竹と、季節を移ろわせながら歌い上げる構成が特徴です。終盤に置かれたマクラと三段の手事には、巣籠地の旋律も合わされ、祝儀曲としての華やかさを一層引き立てています。

演奏を聴く際は、梅・松・竹それぞれの景物の描き分けや、中歌に込められた寿ぎの華やかさ、そして手事の巣籠地が生む曲全体のまとまりにも耳を傾けると、曲の魅力がより深く味わえます。