明治松竹梅|歌詞の意味・菊塚与一・千代田の宮の寿ぎを解説

「明治松竹梅」は、松・竹・梅のめでたい景物に託して、新年と千代田の宮(皇居)の栄えを言祝いだ箏曲です。
曲名は「めいじしょうちくばい」と読みます。作曲は菊塚与一(菊塚与市とも表記される、1846~1909)で、箏の高音部と低音部による二部合奏として作られた明治新曲です。菊塚与一は江戸後期から明治期にかけて活躍し、当時の箏曲界の推進役を務めた人物とされ、「明治松竹梅」のほか「巌上の松」「三つの景色」なども代表作として知られています。
古典的な地歌の「松竹梅」(三ツ橋勾当作曲)とは別の曲で、同じ吉祥の題材を、明治という新しい時代にふさわしい形で作り直した作品にあたります。
「明治松竹梅」の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 曲名 | 明治松竹梅 |
| 読み | めいじしょうちくばい |
| 分類 | 箏曲、明治新曲、箏高低二部合奏 |
| 作曲 | 菊塚与一(菊塚与市、1846~1909) |
| 主な編成 | 箏(高音部・低音部の二部) |
| 主題 | 松・竹・梅に託した新年と千代田の宮(皇居)への寿ぎ |
複数の百科事典系の解説によれば、「明治松竹梅」は菊塚与一(与市)作曲の箏曲で、「箏高低合奏」の編成による曲とされています。同名の古典的な地歌「松竹梅」(三ツ橋勾当作曲)とは異なる、明治期に新しく作られた曲です。
「明治松竹梅」とは
「明治松竹梅」は、松・竹・梅というめでたい三つの景物それぞれに一節を配し、新年を言祝ぐ内容の箏曲です。
作曲者の菊塚与一は、江戸後期に生まれ明治期にかけて活躍した箏曲家で、当時の箏曲界を牽引する存在であったとされています。「明治松竹梅」は、そうした明治期の箏曲界の動きを代表する作品のひとつです。
歌詞には「千代田の宮」――東京の皇居を指す言葉――が登場し、松に鶴、竹に雪、梅に千代田の宮の慶びを重ねながら、新しい時代の新年を寿ぐ内容になっています。
明治松竹梅の歌詞
風の音は静まりはてて千代呼ばふ、田鶴が音高し峰の松原。
栄えゆく御園生の松に雛鶴の、千代の初めの声を聞かばや。この国に幾重降るとも雪ならむ、篁高くなりまさりつつ。
たちおくる年の朝日に梅の花、かをりとめけり雪間ながらに。
大君の千代田の宮の梅の花、えみはころびぬ年の始めに。
新玉の年の始めの梅の花、みるわれさへに恵まれつつ。
※本記事の歌詞は、尺八譜に掲載された詞章を底本としています。譜本や流派によって表記が異なる場合があります。
歌詞全体の意味
風の音もすっかり静まり返る中、幾千代の栄えを呼び求めるかのように、鶴の鳴く声が高く響く、峰の松原です。ますます栄えゆく御苑の松には若い鶴が宿り、その千代の始まりを告げる声を聞きたいものです。
この国に幾重にも降り積もるのは、きっと雪なのでしょう。その中でも、竹林はますます高く伸びていきます。
送り出す年の朝日に照らされて、梅の花は雪の間からも、その香りをとどめています。天皇のいらっしゃる千代田の宮の梅の花は、年の初めにほころぶように咲き笑んでいます。新しい年の始めに咲く梅の花は、それを見るこの私までも、恵みにあずかっているように感じられます。
曲名「明治松竹梅」の意味
「松竹梅」は、古くから慶事の象徴とされてきた三つの植物です。
この曲では、それぞれに一節が配され、松には鶴、竹には雪、梅には千代田の宮の慶びが重ねられています。曲名に冠された「明治」は、この曲が明治という新しい時代に作られた新曲であることを示すとともに、同じ主題を持つ古典的な地歌「松竹梅」との区別の意味も持っています。
曲名には、
- 松・竹・梅という、古くからのめでたい象徴
- 峰の松原に響く鶴の声に託された、千代の栄え
- 雪の中でも高く伸びる竹(篁)の生命力
- 千代田の宮の梅に重ねられた、新年と新しい時代への寿ぎ
といった意味が重ねられています。
「風の音は静まりはてて千代呼ばふ田鶴が音高し峰の松原栄えゆく御園生の松に雛鶴の千代の初めの声を聞かばや」
冒頭では、松の峰に響く鶴の声が歌われます。
風の音が静まり返る中、鶴の鳴き声が高く響く松原の情景から曲は始まります。「千代呼ばふ」という表現には、幾千代にもわたる繁栄を呼び求めるような響きが込められています。続けて、御苑の松に宿る若い鶴(雛鶴)が、新しい千代の始まりを告げる声を聞きたい、という願いが歌われます。
「この国に幾重降るとも雪ならむ篁高くなりまさりつつ」
続く一節では、竹(篁)が歌われます。
幾重にも降り積もる雪の中でも、竹林はますます高く伸びていくという情景には、雪に耐えてなお勢いを増していく竹の生命力が重ねられています。松の鶴に続き、竹の逞しさが歌われる部分です。
「たちおくる年の朝日に梅の花かをりとめけり雪間ながらに大君の千代田の宮の梅の花えみはころびぬ年の始めに新玉の年の始めの梅の花みるわれさへに恵まれつつ」
結びでは、梅の花に三つの情景が重ねて歌われます。
まず、年の暮れの朝日に照らされて、雪の間からも香りをとどめる梅の花が描かれます。続いて、天皇のいらっしゃる千代田の宮(皇居)の梅が、年の初めにほころび笑む様子が歌われ、最後に、その梅の花を見る自分自身までもが恵みにあずかっているという感慨で曲が結ばれます。松・竹に続いて梅に三節を割く構成には、新年の寿ぎの中心が梅にあることがうかがえます。
演奏するときのポイント
松・竹・梅、それぞれの景物の性格を描き分ける
歌詞は、鶴の声に彩られた松、雪に耐えて伸びる竹、千代田の宮に咲く梅と、三つの景物がそれぞれ異なる表情を持っています。それぞれの性格を意識して演奏すると、曲全体の構成美が伝わりやすくなります。
高音部・低音部の掛け合いを大切に
「明治松竹梅」は箏の高低二部合奏です。二つのパートが単独で完結するのではなく、互いに呼応しながら情景を描き出す構成を意識することが大切です。
新年を寿ぐ明るさを基調に
この曲は、新しい年と千代田の宮の栄えを言祝ぐ、祝儀曲としての性格を持っています。曲全体を通して、明るくおめでたい雰囲気を大切に演奏します。
「明治松竹梅」の聴きどころ
- 峰の松原に響く鶴の声に込められた、千代の栄えへの願い
- 雪に耐えてなお高く伸びる、竹(篁)の逞しさ
- 雪間から香りをとどめる、年の暮れの梅の花
- 「大君の千代田の宮」に重ねられた、皇居の梅への寿ぎ
- 新年の梅を見る喜びを、自分自身の恵みとして結ぶ結び
- 松・竹・梅それぞれに一節を配した、バランスのよい構成
- 箏の高音部・低音部が呼応し合う、二部合奏ならではの響き
- 明治期の箏曲界を牽引した菊塚与一による、新時代の松竹梅
まとめ
「明治松竹梅」は、菊塚与一(与市)作曲による、箏の高低二部合奏の明治新曲です。
古典的な地歌「松竹梅」とは異なる、明治という新しい時代に作られた曲で、松には鶴の声、竹には雪の中の逞しさ、梅には千代田の宮と新年への寿ぎを重ねた、めでたい内容の詞章が特徴です。
演奏を聴く際は、松・竹・梅それぞれの景物の描き分けや、箏の高音部・低音部が呼応し合う響き、そして千代田の宮の梅に込められた新しい時代への寿ぎにも耳を傾けると、曲の魅力がより深く味わえます。