二十弦箏・二十五弦箏とは ── 現代の箏が持つ新たな可能性
二十弦箏・二十五弦箏とは ── 現代の箏が持つ新たな可能性
十三弦・十七弦に加えて、現代の箏には二十弦箏と二十五弦箏というバリエーションも存在します。これらは主に現代音楽・現代箏曲の表現ニーズから生まれた楽器で、それぞれ独自の音域と可能性を持ちます。
二十弦箏(にじゅうげんそう)
概要
弦が二十本の箏です。十三弦箏よりも広い音域を持ちながら、二十五弦箏より扱いやすいとされています。
開発の経緯
野坂惠子が1969年に考案したとされます。十三弦の音域を拡張しつつ、演奏技術的に大きな変更をせずに使えることを目指して設計されました。
音域と特徴
十三弦箏の最低音より低い音が加わり、また最高音側にも弦が増えています。これにより、半音階的な演奏も以前より容易になりました。
現代作曲家が積極的に作品を書いており、特にソロ作品・室内楽作品で使われます。
調弦
十三弦の平調子をベースに拡張した調弦が一般的ですが、曲によって様々な調弦が使われます。弦が多いため調弦に時間がかかりますが、一度調弦すれば半音階的な音も柱を動かさずに出せる利点があります。
二十五弦箏(にじゅうごげんそう)
概要と革新性
弦が二十五本の箏で、現代箏の中でも最も急進的な設計を持つ楽器です。最大の特徴は半音階を完全に網羅できる点にあります。
開発の経緯
1991年、野坂惠子が考案しました。
弦の配置と調弦
二十五本の弦は、ピアノの白鍵・黒鍵に対応するように設計されています。具体的には次のような配置になっています。
弦を二列に配置(または一列で段差をつける設計)することで、白鍵相当の音と黒鍵相当の音を分けて配置します。これにより、柱を動かすことなく半音階的な旋律を演奏できます。
標準的な調弦例:
低音側:G A♭ A B♭ B C D♭ D E♭ E F G♭ G
高音側:A♭ A B♭ B C D♭ D E♭ E F G♭ G
(製作者・演奏家によって異なる)
奏法の特殊性
弦の数が多いため、弦の位置を正確に把握する技術が必要です。伝統的な十三弦の奏法に加えて、両手を使った複雑な動きが要求されます。
現代では演奏家がレパートリーを開拓し、多数の委嘱作品があります。
国際的な展開
二十五弦箏は国際的な現代音楽の場でも注目されており、ヨーロッパやアメリカの作曲家が作品を書いています。箏という楽器が持つ固有の音色と、西洋現代音楽の語法が融合した作品が生まれています。
各箏の比較まとめ
| 項目 | 十三弦 | 十七弦 | 二十弦 | 二十五弦 |
|---|---|---|---|---|
| 弦数 | 13 | 17 | 20 | 25 |
| 主な役割 | 旋律 | 低音 | 旋律(拡張) | 旋律(半音階対応) |
| 半音階演奏 | 困難(押し手で一部可) | 困難 | 比較的容易 | 容易 |
| 主な使用場面 | 古典〜現代 | 現代合奏 | 現代曲 | 現代曲・実験音楽 |
| 考案時期 | 奈良時代〜(伝来) | 1921年 | 1969年頃 | 1991年 |
| 入手難易度 | 容易 | 容易 | やや困難 | 困難 |
初心者へのアドバイス
二十弦・二十五弦箏は高度な現代楽器であり、初心者が最初から取り組む楽器ではありません。十三弦箏で基礎を十分に習得した後、特定の作品や演奏スタイルを追求する中で必要に応じて習得するものです。
多くの専門家でも十三弦を主楽器とし、現代曲の演奏機会に応じて二十弦・二十五弦を使用するスタイルをとっています。
箏の多様な形態は、伝統楽器が現代の音楽表現の要求に応えながら進化してきた歴史を示しています。